夏の風物詩である尾張津島天王まつりは、津島神社最大の祭礼で、7月第4土曜日(かつては陰暦6月14日に行われていた。)には宵まつりがあります。「尾張津島天王祭の車楽舟行事」は、国の重要無形民俗文化財に指定され、広島厳島神社の管絃祭、大阪天満宮の天神祭と共に日本三大川祭りになっており、毎年約20万人の見物人で賑わいます。 まつりの数日前から準備が始まります。天王川の車河戸(くるまこうど:天王川公園南東にあります。祭河戸とも言う)では、2隻の舟を横に並べて固定し1艘に仕立て、屋形を乗せます。屋形の上には“坊主”と称される半球型の麦の巻藁をおき、巻藁の中心には棒を立てます。これを真柱(まばしら)または如意(にょい)と言います。この巻藁船(まきわらぶね)が昔の津島五ヶ村から各1艘、計5艘出ます。 宵まつり前日夕刻には、各町内を出発した稚児行列が、車河戸を経て津島神社へ向かい、神社拝殿前で「稚児打ち回し」という行事があります。この時、稚児は神様の代わりとして扱われますので、足を地に着けることなく人の肩に担がれます。 いよいよ宵まつり当日の午前中には、津島神社からは御神体が神輿に乗って、御旅所(天王川公園の北端にあります)へ移られます。これを「神輿渡御(みこしとぎょ)」と呼び、華麗な行列となり雅楽が奏でられるなど古式ゆかしい風景が見られます。 まつり当日、夕闇が迫る頃、提灯を灯します。先ず、如意に1年の月の数を表す12個の提灯を縦に並べます。続いて、長さ1丈(約3m)の竹竿の先に提灯を付けたものを坊主(前述)に刺し、半球型に飾っていきます。この提灯は1年の日数365個あります。屋台前方には1ヶ月の日数である30個の提灯を飾ります。これを“なべづる”と称します。軒幕に軒提灯、屋台中段には赤絹の48個の絹灯篭を掲げます。 出船の合図が出ると、5艘の巻藁船は車河戸を出船し、津島笛による奏楽を響かせながら優雅にゆっくりと天王川を渡って御旅所まで来ます。宵闇に数千個の提灯が灯り、川面に浮ぶ風景はとても幻想的で、歌川広重の浮世絵、滝沢馬琴の紀行、野口米次郎の散文詩などの題材にもなっています。 御旅所では、車屋一行(祭の責任者)が上陸して御旅所にある御神体に拝礼します。その後、巻藁船は車河戸に戻ります。宵まつりが終わると、車河戸へ戻ってきた巻藁船は、朝まつりのために夜通しで作業し、車楽船(だんじりぶね)に衣替えします。 |